2.介護の質が落ちるのでは?

実務経験が少ない場合、どこまで戦力になるのか?
日本式の介護に適応できるのか?

「提供する介護サービスの質が落ちるのでは?」という不安もありますが、多くは東南アジア出身の学生で、家族を支える責任感が強く、高い意欲で働いています。日本人と同じく最初は慣れないこともありますが、言葉や文化の壁を乗り越えれば、誠実で頼れる存在になります。

特定技能の試験(技能評価試験)は基本的な知識が中心であるため、現場の実践的な流れまでは把握できていないケースがあります。「業務が多岐に渡り、何から覚えてよいかわからない」という声がありました。

業務マニュアルを段階別に作成し(例:1週目=見学、2週目=トイレ介助の補助…)OJTを日本人スタッフが1対1で担当(チューター制)し、業務進捗を見える化。「今日できたこと」を本人に毎日記録してもらい、介護の質を向上。
スモールステップで達成感を持ってもらうなども効果的です。

例えば「利用者の尊厳」「自立支援」「過剰介助をしない」など、日本の介護観に慣れていないことがあります。母国での「お世話」の感覚と、日本の介護観にギャップがある場合なども。

受け入れ前に「日本の介護観」について研修を実施(自立支援・尊厳保持・安全重視など)


ある介護施設では「介護理念や行動指針を絵や動画付きの多言語資料」で提示。理解を深めたことで、本人の介護への誇りが増し、離職率が下がった事例も。

利用者が高齢者であるため、方言・小声・繰り返しの質問などに戸惑うことがある。「丁寧な言葉が使えない」「冗談や空気を読みづらい」といった言語以外の文化的壁も。

「やさしい日本語」に加えて、表情・姿勢・声かけの仕方を研修。非言語コミュニケーションの実技指導(笑顔、目線、拍手など)


介護施設で「笑顔」「リアクションの大きさ」を練習。利用者との関係が改善され、クレームも大幅減。日本人以上に方言も覚える勉強熱心な外国人もいました。

特定技能試験は知識が中心のため、実技経験が不足している場合がある。技術的な動作に戸惑い、腰痛などの身体的リスクがあることも。

入職初期は実技研修(移乗・体位交換・清拭など)を集中的に実施。定期的に技能チェックシートで進捗を見える化。


ある施設では「シニア介護士が特定技能外国人の“技術コーチ”を担当」。1か月で基本動作をマスターでき、利用者からの信頼も得られました。

特定技能では国家資格(介護福祉士)の取得が義務ではないため、キャリアパスが見えづらい。モチベーションが続かず、スキルの習得が途中で止まることも。

施設が介護福祉士資格取得に向けた学習サポートを行う。日本語学習支援+介護福祉士養成講座の案内・費用補助など。


ある施設では「介護福祉士資格取得後に正社員登用+昇給制度」を明示。外国人スタッフの定着率が80%超に向上。

  • 業務の全体像がわからない ▶  業務マニュアル+OJT+スモールステップ 
  • 介護観の違い 日本の介護理念を視覚的に伝える 
  • 利用者との会話に不安  非言語コミュニケーションを強化 
  • モチベーションの維持  資格取得支援とキャリア形成支援